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「このカメラは何だ」から始まった――ミラーレス一眼「OLYMPUS PEN」の商品戦略(1/2)

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2011/08/09 21:59

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 フィルムカメラを彷彿させる独特な魅力をもつオリンパスのミラーレス一眼「OLYMPUS PEN」。今年7月22日に発売した第三世代「E-P3」は、発売日初日を含む「BCNランキング」の週次データで、デジタル一眼カメラの2位に入る人気ぶり。オリンパスイメージングの小川治男取締役マーケティング本部長に、2009年7月の第一世代「E-P1」までさかのぼって「OLYMPUS PEN」の商品戦略を聞いた。(聞き手/BCN・道越一郎、文/BCN・田沢理恵)

小川治男取締役マーケティング本部長

初代ペン生みの親の一言が転機、コンセプトは「上質感」



――今年7月22日に第三世代「E-P3」を発売されました。「BCNランキング」のデジタル一眼カメラの販売台数シェアでは、発売日初日を含む週次データで、シリーズ別集計でいきなり2位を獲得しました。手応えはいかがですか。

小川 7月22日の発売から非常に好調です。「E-P3」は、「OLYMPUS PEN」のコンセプトである「上質な持ち物」「上質な操作性」「上質な表現力」を受け継いで進化しました。グリップ部分のカスタマイズ対応は、「上質な持ち物」として受け入れていただいています。また、「PEN」の代表的な機能である「アートフィルター」は、新たにネガフィルムのような柔らかいトーンなどを表現できる「デイドリーム」や、「スターライト効果」「ホワイトエッジ効果」を加え、10種類から選べるようにしました。「アートフィルター」をデジタル一眼レフカメラ「E-30」に初めて搭載した頃は、『こんなことをカメラでやるのか』などと否定的なご意見をいただいたのですが、「OLYMPUS PEN」に搭載することで、単なる“エフェクト”ではないということが浸透したと実感しています。さらに「E-P3」はタッチパネル液晶を搭載し、タッチパネル上でピントを合わせてシャッターが切れるように操作性を高めました。これは、シャッターチャンスを逃さずにピントが合わせられるなど、気持ちよく写真が撮れることを目指した機能です。三脚に固定した場合でもピントが合わせやすいとプロの方から高く評価していただいたのは、本当にうれしいですね。単にタッチパネルのトレンドに乗ったということではありません。

「E-P3」のタッチパネル液晶は三脚に固定してもピントが合わせやすく、プロカメラマンの評価は高い

――「OLYMPUS PEN」は、ミラーレスという新しいカテゴリでありながら、フィルムカメラを彷彿とさせる独特な魅力があります。幅広いユーザーから支持されていると思いますが、そもそもどんなユーザーをターゲットにして商品化したのですか。

小川 「PEN」の商品戦略は、07年頃にスタートしました。デジタル一眼レフカメラ「E-510」を出した頃です。同時に、開発サイドでマイクロフォーサーズ規格を検討していました。ただ、開発の詳細については、商品戦略本部長だった私も知らない極秘のプロジェクトだったんです。わかっていたのは、『どうやらミラーレスの方向で動いている』ということや、『レンズも本体も小さくできる』ということだけ(笑)。しかし、そんな情報だけでは商品戦略をつくることはできません。まずは、カメラリテラシーを根本から調査することにしました。そもそもカメラユーザーは、デジタルカメラをどのように使っているのか、調査して分析した結果、「プロ志向のカメラマン層」「多彩に使いこなすヘビーユース層」「飾って楽しむモノ志向」の三つに分け、最終的にヘビーユース層をターゲットにしようと決めました。

――多彩に使いこなすヘビーユース層とは、具体的にはどんな方々ですか。

小川 プロ志向のユーザーは、一回の撮影枚数は多いのですが、カメラを持ち出す回数では、主にブロガーなどが含まれるヘビーユース層のほうが多い。プロ志向の人たちを狙っても、ミラーレスカメラで発売する新製品は、サブカメラという位置づけにとどまってしまうだろう。だとすれば、カメラを多彩に使いこなすヘビーユース層をターゲットにしよう――そう決めました。そして、メインターゲットに定めたヘビーユース層の人たちが、本当に欲しいものは何か、ということを突き詰めて「写真を撮っている自分をカッコよく見せたい」「自分の腕以上の表現をしたい」など、10種類のニーズとウォンツを洗いだしました。「OLYMPUS PEN」の代表的機能のアートフィルターは、『自分の腕以上の表現をしたい』というニーズにつながるわけです。この頃、「OLYMPUS PEN」のターゲットを含め、全体のイメージが固まりました。

――07年の段階で、今の「OLYMPUS PEN」のイメージができていたのですね。その後、2009年7月の「E-P1」の発売に向けては、どんな流れだったのですか?

小川 08年になって最終的な製品への落とし込みに入ったわけですが、それまではまだ「OLYMPUS PEN」という名前はついていませんでした。個人的には懐古主義にしたくなかったので、正直いって「OLYMPUS PEN」という名前は使いたくなかったんです(笑)。ところが、若い連中の間で、「どうしても『OLYMPUS PEN』で行きたい」という意見が強かった。一方で、「PEN」の生みの親である米谷美久さんは、「デジタルには『PEN』は使わせない」とおっしゃっていたという話を聞いていました。「OLYMPUS PEN」は商品名ですから、米谷さんの許可がなくても使えます。でも、やはり生みの親ですからね。許可をいただきたい……。当時、研究所にモックを持って行って、2時間ほどお話ししました。2008年11月のことです。米谷さんは「PEN」への思いを滔々と語ってくれて、「実は、ペンは女性を狙っていたんだ。実際には3%くらいしかいなかったが……」というんです。ハーフサイズカメラのペンは、技術的にいうと、被写界深度が深くなるので、オートフォーカス技術がなかった当時は撮影の失敗が少なかった。だから女性もターゲットにしていたというわけです。この話を聞いて、「これはますます新製品は、『OLYMPUS PEN』でいくしかない」と決意を固めました。結局、「『PEN』を使ってもよろしいでしょうか」というお願いに対して、米谷さんからの明確な答えはなかった。でも、ダメとは言われていないので、いいのかなと……。

――ターゲット、イメージ、「OLYMPUS PEN」という名前がついて、その後でコンセプトを決められたのでしょうか。

小川 実は、米谷さんにお許しをいただきにいったときに、「このカメラは何だ」と聞かれて答えられなかった。もちろん、小型・軽量・簡単操作という特徴をコンセプトにすることもできました。しかし、これはマイクロフォーサーズ規格のコンセプトであって、パナソニックさんも同じです。何か違う。米谷さんにお会いした後、「OLYMPUS PEN」であるというコンセプトを決めるのに、正直言って苦しみました。そして翌年の1月頃、「上質な持ち物」「上質な操作性」「上質な表現力」というコンセプトが浮かんだんです。モックから試作品ができていくなかで、金属の外装を見ながら、「『PEN』が『PEN』であるコンセプトは、上質感だ」と。このコンセプトが固まってからは、設計や企画のメンバーの気持ちも固まりました。あのとき米谷さんに『このカメラは何だ?』と聞かれなかったら、多分、小型・軽量・簡単操作をコンセプトにしていたと思います。
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