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ポメラは熱い妄想から生まれた!? 開発者が語る誕生の秘密とこれから(1/3)

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2009/03/03 11:50

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 テキスト入力しかできない「デジタルメモ」という新しい製品ジャンルを開拓したキングジムの「ポメラ DM-10」。文庫本サイズのボディーに折りたたみ式のキーボードとモノクロ液晶がついただけのシンプルな製品だ。しかし、この書くためだけの道具が今人気を呼んでいる。08年を代表する製品として「BCN Best Product 2009」にも選出された。どうしてこんな製品を世に送り出したのか? これからどこへ進むのか? 開発者に聴いた。

テキスト入力だけでいい! あとはいらない



 「カバンの片隅に入って、テキストだけ打てて電源の心配をせずに使えるものがないかと、常々モヤモヤしていました」と語るのは、「ポメラ」の生みの親、開発本部・電子文具開発部・開発課の立石幸士リーダー。毎日のように行うミーティングを記録したり、ちょっとしたアイディアを打ち込める手軽なツールがずっとほしかったという。


 以前はB5のノートPCを持ち歩いていたが、軽いものでも1kg程度はある。バッテリーの「持ち」も心配でACアダプターも一緒に持ち歩くと結構かさばってしまう。必ずしも満足できる使い勝手ではなかった。しかし、ふとノートPCの用途を振り返ると、結局は、ちょっとした議事録だったり、アイディアを書き込んだりする「テキスト入力」がほとんど、ということに気がついた。

 そこで、「折りたたみ式のキーボードとモノクロ液晶でコンパクトなきょう体、電池で駆動するテキストだけ打てるもの、あとはいらない」そんなマシンの構想を思いついた。07年の5月に一枚の簡単な企画書に概要をまとめ、社内のアイディア会議にかけてみた。評判は上々。そして1人が「それってデジタルメモだよね」とつぶやいた。これがポメラのコンセプトを決めた。

 開発部は、もともとミーティングが多い。毎日何がしかのミーティングをしている。そんなときに手軽にメモが取れる製品ということで、企画はすんなりと受け入れられた。そこから、40歳代前半から昨年入った新人までと5名からなるチームで、デジタルなメモ帳づくりが始まった。「ポケット・メモ・ライター」、ポメラ開発のスタートだ。

すべては「妄想」から始まった



 立石さんは「ゼロからの立ち上げで、最初は大変でした。まずは現在販売されている折りたたみ式のキーボードを片っ端から集めることから始めました」と当時を振り返る。当初から折りたたみ式のキーボードを採用することを決めていたこともあり、機械的な折りたたみ構造が開発の1つのポイントになったからだ。多くのサンプルを参考にして、決めたのは現在の2つ折りタイプのキーボードだった。次はソフトだ。

 キングジムの電子文具といえば、ラベルライターの「テプラ」。そのため、同社の開発部門の担当者は何らかの形で、テプラの開発に携わるのが普通だという。しかし立石さんは、RF-IDを応用したファイル管理システムやネットワーク対応のタイムレコーダー、携帯電話の周辺製品の開発を行ってきたが、珍しくテプラの開発には携わったことがなかった。

 結果的にポメラには、テプラの技術を生かすことができなかった。まさにゼロからのスタート。Windowsのメモ帳やWordなどを参考にしながら、仕様を固めていく。エクセルに1つ1つ書いていき、製品の像を具体的にまとめる作業を続けた。これまで温めてきた「こんなものがほしい」という思いを、エクセルのシートにすべて吐き出していく。立石さんは「基本的に妄想から始めてるんです」と表現した。

 製品化するかどうかの最終的な意思決定は、役員も含めた「開発会議」で行う。そこにいたるまでの会議では、すぐに参加者の理解が得られスムースに進行してきた。誰もが「手軽にデジタルメモが取れる何か」を待ち望んでいたからだ。

 製品の概要が固まった07年の12月、いよいよ役員を含めた開発会議だ。しかし、さすがに毎日自ら議事録取りに追われているような人はいない。製品の説明をしても「ふーん」という、どうにもピンと来ない雰囲気が流れた。そこへ1人の役員が「こんなのを待っていた。お金を出してでもほしい」と発言。空気が変わった。社長が常々「お金を出して買いたいという人が1人でもいるということはそこに市場があるということ」と話していたこともあり、製品化にGOが出た。

ホワイトボードは1時間で真っ黒に



 製品発表は08年の10月に決まった。約10か月で量産にまでこぎつけなければならない。開発チームにとって大忙しの日々が始まった。

 実際の設計・製造でタッグを組んだのは中国の協力会社。キングジムはプロデュースにまわり、相互に協力し合いながら製品を形にしていく。この会社と組むのは今回が初めて。人づてに紹介してもらったり、ウェブサイトで探して突然電話したりといろいろな手段で片っ端からあたっていった中、製品を理解してくれ、面白いと賛同してくれた会社を選んだ。

 月に1-2回は現地に行って打ち合わせ、という生活が続く。交渉はすべて英語だ。ところが「英語がぜんぜん苦手」な立石さん。とにかく単語をつなぎ合わせたり筆談したり、最後はボディーランゲージも交えてでも、なんとか意志を伝えていく。「中国のエンジニアに僕たちの妄想を伝えてディスカッションを重ねて作り上げていきました」(立石さん)。

 カタコトの英語を使った打ち合わせは大変だったというが、「1時間でホワイトボードが真っ黒になるくらい」密度の濃いものだったという。開発の山場には3週間連続で滞在して細部を詰めていった。実は、製品を発表した10月21日には、立石さんは日本で発表会に参加したものの、他のメンバーはまだ現地に残って量産品の品質を安定させるべく詰めの作業を行っていたという。まさにぎりぎりのスケジュールだった。 
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